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2012.10.29
介護事故の判例から学ぶ施設側の注意点

1.介護事故についての考え方

高齢者向けの介護施設では、入居者の怪我や骨折などを防ぐためのマニュアルを作成されている施設もあると思います。介護現場で、事故が全くないことは理想であり、それを入居者や家族にとっても希望することは当然です。

しかし、相対的に身体的な機能が弱まっている高齢者が生活する介護施設で、介護事故に関して「決してあってはならないこと」と考えるのは、利用者の尊厳にとって、逆に危険な側面をもっています。たとえば、転倒事故を防止しようとする場合、利用者の身体を拘束してしまえば転倒事故は決して起きません。ところが、身体的拘束は、利用者の尊厳を著しく害する行為なのです。

そこで、「決して介護事故があってはならない」と教条的に考えることよりも、「二度と同じような事故を繰り返さない」という具体的な課題に取り込むことこそが大事になってきます。

2.介護事故の判例

介護事故の対応に取り組みにあたり、介護事故の裁判例を参考にすることは非常に重要です。なぜなら、事業者が組織の永続性を図ろうとしたときに、介護事故によって認められる過失の有無、あるいは損害額の基準などを知っておくことは、事故対策のメリハリをつけることを可能にし、それをもって大きな賠償額という致命傷をさけることに必須の知識だからです。

介護事故について、施設事業者側に法的責任が認められるかどうかは、施設事業者側の故意・過失の有無の点にあります。もっとも、故意で介護事故を起こすのは犯罪行為ですから論外として、過失が認められるかどうかが問題となります。

過失が認められるかどうかは、まず1.結果を予想できたのかどうかを考えます。つまり、結果を予想できなければ、過失はないことになります。次に結果を予想できた場合、2.その結果を生じるのを避ける義務を尽くしたのかどうかを考えます。結果を避ける義務を尽くしたのに結果が生じてしまった場合には、過失は認められません。

以下、2つの参考となる裁判例を見てみましょう。

A.老人保険施設における転落事故

【事例】
全盲で認知症高齢者のAさんが、老健施設入所後3週間たったある日、同室者と口論になって興奮状態になったため、介護福祉士が別室に連れて行ったところ、その部屋の窓からAさんが転落して死亡してしまった、という事件です。

この事件では、介護福祉士に対し、看護士が「刺激を与えないように」という指示をしたため、介護福祉士は困惑しながらも声掛けなどを全く行うことができず、Aさんはただひたすら放置されたに等しい状況でした。

この判決では、看護士、介護福祉士等の福祉職の専門性や裁量性を認めた反面、福祉職に対して重い注意義務を課し、本事案では、介護福祉士がAさんが落ち着きを取り戻しているか確認を一切していない点や、睡眠が不足していたAさんに対して寝具等の提供をして、不安定な状態を解消させる措置を試みるべきであったのに、それを行わなかった点について、福祉職の裁量的判断の範囲にあるとは言い難く、適切な介護すべき義務を怠ったとして、施設の責任を認めています。

また、判決には書かれていませんが、背景の事情として、施設がAさんの親族を、お金目当てで騒いでいるのではないかと不信感を持って親族に対応したことが、かえって親族を憤慨させています。もし、誠実な謝罪を施設側が行っていれば、裁判に訴えることもなかったのではないでしょうか。

B.ショートステイでの誤嚥事故

【事例】
重度の認知症高齢者Bさんがショートステイに入所中に食物の誤嚥によって窒息死した事案です。Bさんは、食物を噛んでいる時間が長く、なかなか飲み込めないという傾向にあったため、職員間でもどのように介助すべきか議論していた矢先に起こってしまった事故です。

判決では、結果回避のための措置が十分に果たされていたかについて争点になりました。裁判所は、救急車を呼ぶ時間が遅かった点や吸引器を使用しなかった点などを指摘して、事業者側の過失を認めました。

確かに、救急車を呼ぶのが遅かった点については、法的責任を問われるべきでしょう。しかし、判決で指摘されているような吸引器の使用は医療行為ではないかという議論もありますので、簡単に吸引器を使用すべきだとはいえないはずです。

また、Bさんの尊厳を重視して、ミキサー食に変えたりせずに介助しようとした点は評価すべきです。

このように、この事例では介護の現場で多くの悩みがあるにも関わらず、その点が判決に反映されていないような気がします。介護関係者は、もっと積極的に介護現場での悩みを裁判所に説明していく必要性も認識すべきでしょう。また、介護現場を支援する立場の、我々のような他の分野の専門家も、そのことに耳を傾けるべきでしょう。

介護施設では、上記の裁判例なども参考に、1.どのような事故が施設で起こりうるのか(予見可能性)、2.そのような事故を回避するにはどのような措置を取るべきなのか(結果回避性)をふまえたうえで、職員が職務に取り組むことができるように体制を整えていく必要があります。

  (坂西 涼)

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