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2013.10.28
信託は誰のために、どんな人が行うの?(信託の当事者について)

1.信託は誰のために?

信託とは、

 「財産を持っている人(託す人)」が、自分の財産を、「利益を受ける人」のためになるように、「信頼のおける人(託される人)」に託すこと。

という意味のことを以前「信託の活用(大切な人のために)」のコラムのなかで書かせて頂きました。

では、「信託」は誰のためのものか?

まずは、当然ですが「利益を受ける人」のためでしょう。

「利益を受ける人」は、信託契約などに定められたとおりに、「託される人」の尽力により、財産の利益を受けることができます。「託される人」は信託財産が「利益を受ける人」のためになるように財産を所有管理する責任を負います。

ただ、実のところ信託は、財産の管理責任を負う「託される人」のためのものでもあります。財産の管理責任を負う人は、信託を活用することで、財産の名義を取得することができるため、財産をスムーズかつ迅速に管理運用することができます。財産を任された人にとって信託はその責任を全うしやすい環境を与えてくれるものとなります。

さらに信託は、「財産を将来に向けて、今思い描くとおりに活用したい」という「託す人」の想いの実現をするものでもあります。かけがえのない財産を信託を活用することで、その管理方法や恩恵を受ける人を、あらかじめ決めておくことができるのです。その恩恵の内容や恩恵の対象者を、前段階からかなり柔軟に設計できるのも信託ならではの特徴です。

このように信託は、それに関わる三者すべての立場の人の、それぞれのためになるものでもあります。まさに将来にわたり、関係者に、WIN,WIN,WINの関係を築くことのできるものであるのです。

2.信託の立場は兼ねられる?

このように信託とは、財産を「託す人」、「託される人」、「利益を受ける人」の3人の立場で構成されますが、ときにこれらの立場のうち二つの立場を兼ねることがあります。

まずは、「託す人」が「利益を受ける人」を兼ねることがあります。これは、財産を持っている人が、「自分自身の利益になるように」かつ「他人に財産を任せる」こととなります。むしろこの形は、信託において一般的によく行われているもので、財産の運用などを信託銀行など運用のプロに任せたりする場面で見られます。このように「託す人」が「利益を受ける人」を兼ねることは「自益信託(じえきしんたく)」と呼ばれています。

最近では、老後の管理を目的として、「最初は自分自身のために財産を信託(自益信託)し、自分が亡くなった後は、子のためになるようにする」という信託内容を設計することが考えられたりしています。

また、「託す人」が「託される人」を兼ねることもあります。これは「自分の財産」を「自分自身に信託する」ことになります。これは「自己信託(じこしんたく)」と呼ばれています。財産を持っている人は、「特定の財産」を、「ある人のために」分別して、「自ら管理する」こととなります。

たとえば「障害を持つ子のために、今から財産を確保して他の人に託したいが、自分が元気なうちは私自身で管理したい」といった場合に使えることになる手法です。まずは自分自身の財産を「自己信託」し、子のための財産と、他の自分の財産とを分別管理し、「将来一定の時期が来たときに、他の人が管理する」のをあらかじめ予定することが可能となります。

具体的な手続きについても少しご紹介しておきましょう。信託の内容については、財産を有する人が「信託宣言」というものを作成し、そこに記載することになります。この場合、財産を持っている人一人の決定で信託内容を決めることになります。ここに一定の客観性を持たせるため、公証役場で認証してもらったり、公正証書として残しておくか、もしくは「利益を受ける人に」内容証明郵便で通知するなどの手続きを行う必要があります。

こうした「自己信託」の最大の意味は、自分の財産と分別しておくことで、万一「財産を持っている人が、信託の後になって信用不安や破産状況になる」というような不測の事態が起きても、信託財産が差押などから保全されることにあるといえるでしょう。

では、もうひとつの組み合わせである、「託される人」が「利益を受ける人」を兼ねることはできるでしょうか。

これは「利益を受ける人」が自分のために財産を所有管理する状況となりますが、この状況は、財産の実も形も有している状況であり、もはや通常の所有権者そのものといっていい状況になります。したがって、「託される人が」「利益を受ける人」を兼ねることは、信託の趣旨から外れることになります。

しかしながら、信託の活用の中で、狭い当事者関係のなかでは一時的に「託される人」が利益を受ける立場になることも想定されるところです。このため信託法では、「託される人」が「利益を受ける人」になってから1年後に信託が強制的に終了する、としています。仮に「託される人」が「利益を受ける人」となっても、1年以内に新たに別に「利益を受ける人」になる人が現れるようにしておくことで、信託を継続させることができるようになっているのです。

また、「利益を受ける人」は複数でも認められています。「託される人」が「利益を受ける人」になっても、他にも「利益を受ける人」がいる場合には、信託は終了しません。

このように信託は、「託される人」が他の「誰かのために」財産を所有管理する、という関係が続く以上は存続します。

「誰かのために」財産を活用する限り、信託はその「当事者」のあり方も含めて柔軟に設計することができるのです。

(石井 満) 


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