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2014.08.18
認知症高齢者の徘徊問題について

以前のコラム「認知症高齢者の起こした事故の責任」で、徘徊症状がある認知症高齢者が列車にはねられ死亡した事故で、遺族に対して鉄道会社へ359万円の損害賠償を命じる判決を取り上げました。

この判決は、認知症の高齢者を介護する家族の限界も浮き彫りにしました。さらに、介護施設等にも、今後の介護責任について衝撃を与えるものとなりました。

今回のコラムでは、事故の原因ともなった認知症高齢者の徘徊について取り上げたいと思います。

・認知症の行方不明者は年間9607名、緊急一時保護は6年間で546人にも

認知症が原因で行方不明になったとの届出が平成24年度には9607人にものぼることが明らかになりました(警察庁発表)。平成24年中に所在が確認できた人は、以前より行方不明になっていた人も含めると9478人。帰宅したり、発見されたりしたのは8754人で、359人が発見時に死亡していました。

死亡されている方もこれだけの人数の方がいるというのは驚きで、今後は認知症高齢者に対する早期発見ができる社会・街づくりを作り上げる必要性を強く感じます。

また、認知症などの疑いで警察に保護された高齢者らのうち、名前が分からないために自治体が介護施設に暫定入所させるなどの対応である「緊急一時保護」の対象となった人が、平成20年度から平成25年度の約6年間で546人にも上ることが判明しました(政令市、県庁所在地、東京23区の計74自治体調査結果)。

道に迷った高齢者などを見つけた警察は、原則24時間を越えて保護できず、介護の対応もできません。24時間を越える場合は、自治体が本人の健康と安全を守るため介護施設に預ける緊急一時対応を取っていますが、法律に明確な定めはなく、各自治体がそれぞれの手法で対応しているのが実情です。

・仮名で過ごしている方も

自分の氏名、住んでいる場所、家族の名前などが認知症の症状により言えない場合は、緊急一時対応での施設で仮名のまま過ごしている方もいます。

また、身元が判明するケースは様々です。親族から連絡がつかないと警察に届出がある場合や、住んでいる自宅の大家さんから、本人の姿を最近見かけないので心配して警察に通報があるようなケースなどです。

しかし、行方不明の届出すら困難な場合もあります。緊急一時保護されていた男性の遠方に住む息子から、父親が帰宅していないとの連絡があり身元が分かりました。自治体職員が男性の自宅を訪れると、2人暮らしの高齢の妻も認知症が進み、夫が帰宅しないことも分からない様子でした。

・徘徊の理由を考え、優しい気持ちで接することが大切

認知症により多くの物事を忘れても、感情は持ち続けると言われています。「家から出るな」などのようにプライドを傷つける言動をすると、逆上したり、その場から逃げ出すこともあるといいます。

徘徊する認知症高齢者に声を掛ける際には、(1)驚かせない(2)急がせない(3)自尊心を傷つけないことが大切です。徘徊している人は自分の居場所が理解できず、判断力が低下していることから、他人に帰り道を尋ねることも思いつきません。不安を抱えていることが多い徘徊している人には、優しい気持ちで接することが大切です。また、徘徊するにも理由があり、「生まれ故郷に帰りたい」「仕事先に向かっている」「震災のボランティアに駆けつけたい」など、徘徊している認知症高齢者にその理由を尋ねると、皆それぞれに理由があるのです。従って、その理由を尊重して、不安を少しでも取り除く対応が必要です。

・社会的な理解と地域で見守る仕組み作りが必要

認知症の高齢者の金銭絡みのトラブルも増加傾向です。店舗からの商品の持ち帰りや飲食店での無銭飲食などが様々なケースがあります。企業の間でも、国が推奨する「認知症サポーター養成講座」を社員に受けさせる動きも広がりつつあります。

同養成講座は、平成17年に厚生労働省の事業の一環としてスタートしました。認知症の知識を身につけた自治体の職員らが、認知症の病気の特徴や患者との接し方を指導します。
また、鉄道事故のような金銭面での負担が大きい事故のトラブルは、保険対象として取り扱うのが望ましいといえます。

さらに、認知症の人が行方不明になったときは、家族などからの連絡を受けた警察や市役所が町内会や郵便局、市民らにメールを送信し、町ぐるみでの捜索態勢が敷かれる試みを行っ
ている自治体も出てきています。

自宅で生活をしている認知症高齢者の方の介護に関わる家族、介護職の方にとって、徘徊に対するリスクに不安を抱いている方も多いでしょう。しかし、不安があるからといって、家の中に閉じ込めるのではなく、本人の気持ちや不安に寄り添い、安心して生活できる環境をどうしたら作ることができるのかを考えることが重要です。

また、徘徊した際に早期発見ができる仕組みを備えることで、介護者の精神的負担を軽減することも大切です。

(坂西 涼)

 

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