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2014.07.28
信託の活用方法とは

遺言書ではなく信託を利用して遺産を承継するということが最近注目を浴びています。

これまでは、「自分の死後、財産はこうしてほしい!」という希望があった場合、遺言書を遺すという選択しかありませんでした。ところが遺言書では財産を譲るか譲らないかだけしか決めることができないため、たとえば、収益マンションである甲不動産という財産がある場合、そのマンションの運営管理は長男のAにさせたいが、収益の一部は次男のBが得るようにしたいというような希望があっても、遺言書でそれを実現することは現実的には難しいものがありました。しかし最近では、信託契約を活用することにより、前記のような希望もかなえることが出来るようになりました。このような種類の信託は「遺言代用信託」と呼ばれていますが、今後も普及していくでしょう。

遺言代用信託以外にも、様々な場面で信託を活用する可能性はあります。

東京オリンピック開催も決定し、これから景気が上向きになるであろうという予測のもと、各業界でもこれまでにはなかった規模の大口の取引や、新規の取引先との繋がりも出てくるかもしれません。

例えば大口の取引が決まったときのことを考えてみてください。仕入れをし、さあ決済だというときに相手方が倒産してしまったら、こちらは在庫を抱えて丸損になってしまいます。そのリスクを回避するために取引しないとなるとせっかくのチャンスは失われます。しかし、これまでに取引したことのない先であれば、そのリスクはかなりシビアに検討する必要があるでしょう。

こういう状況の場合、取引先に対し事前に費用を支払ってほしいという話になるかもしれません。そうなると逆に取引先としてはその費用を持ち逃げされるのではないか、というリスクがあり、話がうまく前に進まない可能性があります。

こんなとき、信託を利用するという方法があります。

仕入れをして物品を製造し、その物品を売却する会社をA、購入する会社をBとします。

AのリスクはBが倒産等の事情により、物品を購入してくれなかったため、仕入れの費用が丸損になることであり、そのリスクを解消する方法は、Bに対して事前に費用を支払ってもらうことです。Bのリスクは、Aに支払った費用を持ち逃げされることや、費用をもらったことをいいことに、納品が大幅に遅れるなど、Aの態度が変わることです。この両者のリスクは裏と表のようなものであるため、このままでは両者のリスクが同時に解消されることは不可能です。

しかし、AとBの間に、信頼の置ける第三者を置くと、そのリスクを同時に解消することができます。その信頼の置ける第三者をCとすると、まずAとBが売買契約と共に、信託契約を結び、BはCに対し、費用を信託します。Aとしては、BがCに費用を信託しているので、Bが倒産したとしても、費用をもらい損ねるというリスクは解消されます。しかし、このままではその費用はもらえないので、Aは物品の製造をし、Bに納品できる状態に整えます。ここまでやったところで、CからAに費用が支払われるという流れです。Bとしても、納品できる状態になるまで、費用はCの元で保管されるので、Aが費用を持ち逃げするなどのリスクは解消されます。尚、現実的にはCの役割は信託業法の許可を有する信託会社や信託銀行が担うことになります。

これまで日本のビジネスでは互いの「信用」が重視されてきました。ある製品が良くても、その製品をつくる企業の財務体質が悪いと、取引してもらえないということはよくあり、それは当然のことでした。しかし、信託制度を利用すれば、財務体質が悪くても、零細企業であっても、製品の品質がよければチャンスが生まれます。また、海外との取引は信用不安があるため避けてきた、という企業でも、チャレンジすることは容易になるかもしれません。

このように、信託を活用すると、確実にビジネスチャンスは広がります。上記で述べたような物品売買の場面だけでなく、様々な場面で、信託契約を活用できる可能性があります。

例えば、語学学校に授業料を既に支払っていたのにその語学学校が倒産してしまい、支払い済の授業料が返還されなかった・・・というニュースを昔テレビで見た方も多いと思います。しかし、もしその語学学校が授業料を信託会社や信託銀行に信託するという仕組みを採用していたら、授業料を返還してもらうことはできたはずです。なぜなら、信託には「倒産分離機能」というものがあり、信託された授業料は語学学校の経営資金とはみなされず、たとえその語学学校が倒産しても、授業料は倒産手続きに組み込まれないからです。現在では、語学学校を始め、資格取得を目的とする学校を経営する企業などでは、実際に信託契約を採用している企業もあります。今後、信託契約を採用しているか否かということは、生徒が語学学校等を選択する際の大きな判断材料になっていくのではないでしょうか。

こうした様々な場面で、信託の可能性は広がっています。これからも目が離せません。

(内藤 佳織)

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