秘密証書遺言の再評価
遺言
|更新日:2024.9.30
投稿日:2024.09.30
最近では「終活」という言葉がすっかり定着し、それまではタブーに近かった老い支度も世間によく知られるところになりました。
中でも、財産の分け方を中心に示した遺言書の作成は代表的な終活の一つといえますが、その作成方法として以下の4つが代表的なものとして挙げられます。
① 自筆証書遺言(自身で保管)
② 自筆証書遺言(法務局での保管)
③ 公正証書遺言
④ 秘密証書遺言
①から③についてはよく利用されており、ネット上でもたくさんの情報が得られます。
とくに公正証書による形態は2023年の1年間で12万件弱も利用されていますが、秘密証書遺言は年間100件前後と極端に人気のないものとなってしまっています。
ただ、わたしはこの秘密証書の形態を利用した遺言は、もっと評価されてもよいのではないかと考えています。
もちろん、だれにでも勧められるわけでなく、作成される方の属性等を見きわめての使い分けが大前提です。
とくに財産内容におおきな変動が想定され、かつ保有する自社株の株価がそれなりに大きな企業経営者などは、3年から5年ごとで変動した財産内容を元にした遺産分割の方法の見直しを検討する必要が高いです。
そして、その見直しのたびに遺言書を書き換えることが必要となります。
このような場合に、法律専門職の支援のもとで秘密証書遺言を活用する余地は大いにあるのではないかと思っています。
秘密証書遺言とは
さて、そもそも秘密証書遺言とはどういうものかについて、以下にお示ししたいとおもいます。
秘密証書遺言は、遺言者が遺言書を封筒に入れ、公証人や証人に内容を見せずにその存在だけを証明してもらうやり方です。
作成者が遺言書に署名・押印し、封筒に入れて封印した後、2人の証人とともに公証役場に持参して公証人に提出します。
そして手続き後の遺言書は遺言者側で保管し、遺言者の死後には家庭裁判所での検認手続きが必要となります。
この方式、なにが楽といって、自筆証書みたいに全文を自筆(財産部分は除く)で書く必要がなく、自筆は署名部分だけでOKです。
また、会社経営者の財産は自社株中心に財産額が大きくなりがちで、公正証書遺言だと数十万、下手をすると100万円以上の手数料がかかることもありえますが、秘密証書遺言だとわずか11,000円の定額ですみます。
遺言者がなくなったあと、遺言書を家庭裁判所に提出し、相続人全員が集まって開封を行う検認手続きが面倒との指摘もありますが、遺言執行者などが相続人に対して遺言内容や遺言者の意思について説明する場として考えたら、逆によい機会となりえます。
なにより、公証役場という役所で、元裁判官、検事、あるいは弁護士と実務経験豊かな法曹者の前で遺言を作成するという儀式性も、遺言者にとって気持ちの節目となり、その安心感のようなものが自筆証書とは決定的に異なるように感じます。
まとめ
以上のように、どのケースでも利用できるわけではありませんが、財産額が大きく、かつその変動幅が大きいと予想されるがゆえに、定期的な遺言書の見直しが必要な場合で、かつ専門職が内容作成に深く関与する、そして相続人間で深刻な争いが存在しないなど条件が備わった場合、実は秘密証書遺言はかなり使い勝手のよい遺言書作成の形態といえるかもしれません。
みなさまの周りの会社経営者の方が遺言作成の検討をされる際には、秘密証書遺言の検討をいただいてもよいのかもしれません。
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