
相続放棄にかかる費用は誰が払う?内訳や専門家に依頼する場合の相場も解説
相続
投稿日:2025.02.27
「故人の借金を引き継ぎたくない」「相続トラブルを回避したい」と考えている方には、相続放棄という手段があります。
相続放棄の手続きには費用がかかり、相続放棄を専門家に任せる場合はさらに負担が大きくなります。
そのため、相続放棄にかかる費用の相場や支払いに不安を感じて、相続放棄に踏み切れない方もいるでしょう。
この記事では、相続放棄にかかる費用の相場はいくらか、誰が払うのかを詳しく解説します。
相続放棄の費用は誰が払う?|申述人が支払う
相続放棄にかかる費用は、一般的に申述人(相続放棄を家庭裁判に申し立てる人)が支払います。
具体的には、以下のような費用を支払うことになります。
- 書類の取得費用
- 裁判所へ納める費用
- 専門家の依頼費用(専門家に依頼した場合のみ発生する)
これらの費用を負担する人に関して、法的なルールは存在しません。
そのため、複数人で相続放棄をする場合は、費用を共同で負担することも可能です。
ただし、事業継承などを理由に特定の相続人に遺産を集中して相続させる場合は、遺産を引き継ぐ相続人が費用を支払うケースもあります。
専門家に依頼すると費用が高額になることもあるため、相続放棄に複数人が関係する場合は、誰が支払うのかを事前に話し合っておきましょう。
なお、遺産を相続放棄の費用に当てることはできません。
相続財産を使用すると、遺産を自分のものとする意思を示したとみなされて「法定単純承認」が成立します。
その結果、相続放棄が認められなくなるため注意してください。
相続放棄にかかる費用の相場
相続放棄にかかる費用は、自分で手続きする場合と専門家に任せる場合で異なります。
ここからは、相続放棄にかかる費用の相場を解説します。
自分で手続きする場合|3,000円〜5,000円
自分で相続放棄の手続きを行う場合の費用相場は、申述人1人あたり3,000円〜5,000円程度です。
必要になるのは、家庭裁判所に納める費用と、相続放棄の手続きに必要な書類を取得するための費用のみです。
自分で手続きすると、必要書類の準備や裁判所への対応などに手間と時間を要するものの、コストを最小限に抑えられます。
多少の手間がかかってもできるだけ費用を抑えたい場合は、自分で手続きすることを検討するのも良いでしょう。
司法書士に依頼する場合|3万円〜8万円
相続放棄を司法書士に依頼する場合の費用相場は、3万円〜8万円程度です。
司法書士には、手続きに必要な戸籍謄本などの取得と、家庭裁判所へ提出する申述書の作成を任せられます。
ただし、裁判所からの問い合わせは申述人に届くため、司法書士のアドバイスのもとで申述人が対応することになります。
とはいえ、数々の書類の準備を任せられることは大きなメリットです。
必要書類を自分で用意することに負担を感じる方は、司法書士へ依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼する場合|5万円〜10万円
相続放棄を弁護士に依頼する場合の費用相場は、5万円〜10万円程度です。
弁護士は、相続放棄に必要な書類の取得や作成だけでなく、家庭裁判所への申述や裁判所からの問い合わせ対応まで代行可能です。
また、故人が負債を抱えていた場合、債権者からの請求なども弁護士に対応してもらえます。
弁護士に依頼すると、相続放棄に関わるほぼ全ての手続きを任せられます。
ただし、自分で手続きしたり司法書士に任せたりする場合に比べて、費用は高額です。
さらに、複数の相続人で同じ弁護士に依頼すると、人数に応じて増額されるケースもあります。
相続放棄の準備に割く時間がない方や、費用がかかっても手続きをまるごと任せたい方は、弁護士への依頼を検討しましょう。
そのほかの場合
相続放棄の手続きは、行政書士に依頼したり、法テラスを利用したりする方法もあります。
行政書士に依頼する場合の費用相場は、数万円程度です。
ただし、行政書士が行えるのは相続放棄に必要な戸籍謄本などの取得のみです。
申述書の作成や裁判所とのやり取りは申述人が行う必要があるため、依頼する前によく検討しましょう。
一方で、法テラス(日本司法支援センター)は、法的トラブルの解決をサポートする目的で国が設立した総合案内所です。
法テラスが提供する「民事法律扶助」の制度を利用すると、費用を抑えながら相続放棄の手続きを進められます。
法律相談を無料で受けられて、弁護士や司法書士への依頼が必要になった場合も費用を立て替えてもらえます。
立て替えた費用は分割して法テラスに返済しますが、利息は発生しません。
利用には条件があるものの、収入が少ない状況で多額の負債を相続してしまう場合などは相談してみると良いでしょう。
相続放棄にかかる費用の内訳
相続放棄の手続きにおいて、裁判所に納める費用と必要書類の取得費用は必ずかかります。
専門家に頼らず、自分で手続きする場合に最低限支払う必要があるのがこれらの費用です。
ここでは、相続放棄にかかる費用の内訳について詳しく紹介します。
裁判所に納める費用
裁判所に納める費用の内訳は、次のとおりです。
収入印紙代 | 申述人1人あたり800円 |
---|---|
連絡用の郵便切手代 | 400円〜500円程度 |
収入印紙は、相続放棄を申述する際の手数料にあたります。
800円の収入印紙はないため、400円などの収入印紙を必要な分用意しましょう。
郵便切手は、裁判所から申述人へ連絡する際に使われます。
郵便局やコンビニ、市役所など、郵便切手を取り扱っている場所の多くで収入印紙も販売しているため、一緒に購入すると良いでしょう。
ただし、連絡用郵便切手の金額は家庭裁判所により異なります。
購入前に家庭裁判所に問い合わせ、金額を確認しておくとスムーズです。
なお、相続放棄を申述するのは故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所であるため、問い合わせ先に注意してください。
書類の取得にかかる費用
相続放棄の手続きに必要な書類の種類と、それぞれの取得費用の内訳は次のとおりです。
必要書類 | 費用 | 備考 |
---|---|---|
相続放棄する人の戸籍謄本 | 450円 | 全国の市町村役場で取得可能 |
住民票の除票または戸籍の附票 |
200円〜400円 | ・交付手数料は自治体により異なる ・住民票の除票は故人の最後の住所地にある役所窓口、または郵送で請求可能 ・戸籍の附票は故人の本籍地の役所窓口や郵送のほか、故人と同じ戸籍に記載されている人はコンビニでも取得可能 |
除籍謄本または改製原戸籍謄本 | 750円 | 全国の市町村役場で取得可能 |
なお、故人と相続放棄する人の関係性により必要な書類の範囲が変わります。
相続放棄する人が故人の配偶者、子またはその代襲者(孫、ひ孫など)の場合は、死亡が記載された戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本のいずれかのみでかまいません。
一方で、相続放棄する人が故人の直系尊属(父母、祖父母など)、兄弟姉妹またはその代襲者(甥姪)の場合は、故人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本のいずれかが必要です。
また、親族の中にすでに死亡している方がいると、さらに戸籍謄本が必要になるケースもあるため、事前に確認してから用意しましょう。
相続放棄に関するよくある質問
ここまで、相続放棄に関する費用について詳しく解説してきました。
しかし、相続放棄をするうえで疑問に思うことは多くあるでしょう。
そこで、相続放棄に関するよくある質問に回答します。
相続人が生活保護を受けている場合、相続放棄の費用は誰が払う?
生活保護を受給している人が相続放棄する場合でも、費用は相続放棄を申述する本人が負担します。
生活保護を受けていることを理由に費用が免除される、といった制度はありません。
なお、生活保護の受給者が相続放棄を認められるのは、相続財産に負債が多いケースに限られます。
相続財産がプラスの場合、その財産を生活に活用することが求められるため、生活保護を受けている人は相続放棄できません。
万が一、プラスの財産を相続放棄した場合、生活保護の支給が停止されたり、過去に受給した生活保護の返還を求められたりする可能性があります。
法定相続人全員が相続放棄すると、借金は誰が払う?
法定相続人全員が相続放棄した場合、残った負債は連帯保証人が返済することになります。
相続放棄しても、借金がなくなったり減額されたりすることはありません。
そのため、相続放棄した人以外の相続人が返済する必要があります。
しかし、法定相続人全員が相続放棄すると、相続財産清算人を選任して、プラスの財産から負債の返済を行ってもらうことになります。
全員が相続放棄すれば原則として返済義務はなくなりますが、相続財産清算人が選任されて財産を引き継ぐまでの間は財産を管理しなければなりません。
また、相続放棄しても連帯保証責務は残ります。
相続財産清算人がプラスの財産から返済しても負債が残っている場合、債権者は連帯保証人に支払いを請求します。
相続人が連帯保証人になっていれば、相続放棄しても返済義務を負うことに注意しましょう。
相続放棄の手続きは自分でできる?
相続放棄の手続きは、基本的に必要書類を用意して家庭裁判所に申し立てるだけなので、自分で行えます。
用意すべき書類や手続き方法などは、家庭裁判所に問い合わせると教えてもらえるでしょう。
ただし、相続放棄すべきなのか、損をしないのかといった個別的な質問に対する回答はもらえません。
自分で書類をそろえていると想定以上に時間がかかり、相続放棄を申述できる期限が過ぎてしまうことがあります。
また、財産に負債があると、他の法定相続人との間でトラブルが起きることも考えられます。
相続放棄について正しく判断し、トラブルを避けながらスムーズに手続きを進めるためには、専門家に任せるのがおすすめです。
相続放棄の手続きを専門家に依頼するなら、司法書士と弁護士のどちらがいい?
司法書士と弁護士のどちらに依頼すべきか迷ったときは、予算や専門家に任せたい内容に応じて決めると良いでしょう。
前述のとおり、司法書士への依頼費用は3万円〜8万円程度で、弁護士は5万円〜10万円程度の費用が必要です。
司法書士に任せられるのは必要書類の取得と申述書の作成であり、裁判所からの問い合わせ対応は申述人が行う必要があります。
とはいえ、ある程度費用を抑えながら、時間や手間をかけずに書類を準備できること、不備のない書類を作成できることは司法書士に依頼する利点といえます。
一方で、弁護士に依頼すると、書類の取得や作成から裁判所への申述まで、相続放棄に関わる手続きを全て任せられるので安心です。
しかしその分、依頼にかかる費用は高額になります。
自分でどこまで手続きできるのか、手続きにかけられる時間はあるのかなどを考慮して、司法書士と弁護士のどちらに依頼するかを決めましょう。
【注意】相続放棄の手続き期限は3ヶ月
相続放棄の手続きには3ヶ月の期限があり、この期限を過ぎると相続放棄できなくなる可能性があることに注意してください。
相続放棄は、相続の開始があったことを知ったとき、つまり亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に手続きしなければなりません。
相続放棄の判断を行うために、故人の財産を正確に調べ上げる相続財産調査が必要な場合もあります。
相続財産調査を行って相続放棄すべきかを判断し、必要書類をそろえていると、すぐに3ヶ月の期限が来てしまうでしょう。
万が一、3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合でも、専門家に相談して裁判所に申し立てると、期限の延長が認められやすくなります。
手続きをスムーズに進めて確実に相続放棄するなら、専門家に依頼するのがおすすめです。
相続放棄は専門家に相談して解決しよう
相続放棄には、裁判所に納める費用や書類の取得費用、専門家への依頼費用が必要です。
これらの費用は、基本的に相続放棄を行う申述人が払います。
相続放棄の実費だけであれば数千円程度で済みますが、自分で手続きを行うと手間と時間がかかります。
そのうえ、書類に不備があったり申請期限に間に合わなかったりして、相続放棄できない可能性もあるでしょう。
したがって、確実に相続放棄を行うなら専門家に任せるのが安心です。
相続放棄をはじめとする相続のご相談は、杠(ゆずりは)司法書士法人にお任せください。
杠(ゆずりは)司法書士法人は深い知識と豊富な経験をもとに、相続に関する幅広いサポートを行っています。
相続に関する問題を気持ちよく解決したい方は、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。
本記事に関する連絡先
フリーダイヤル:0120-744-743
メールでのご相談はこちら >>