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まさかの事態!? 非公開会社(非上場会社)に敵対的買収が起きるとき

企業法務

2020.08.28

1.はじめに

 「敵対的買収」という言葉で、みなさんは何を連想されるでしょうか。たとえばニュースなどで大々的に報じられた事例などから、大戸屋ホールディングスに対するコロワイドの件、デサントに対する伊藤忠商事、王子製紙北越製紙に対する王子製紙、ニッポン放送に対するライブドアの件など、上場会社に起こりうるものとのイメージが強いのではないかと思います。

 では、上場会社でなければ、敵対的買収は起こらないのでしょうか。非上場の会社のほとんどは、定款で全部の株式について譲渡制限が設けられている会社(=非公開会社)となっています。このため、本稿においては、非公開会社における敵対的買収をテーマに進めていきたいと思います。

2.非公開会社における株式の譲渡方法

 非公開会社の株式を譲渡する場合には、定款の規定に従って、会社の取締役会などの承認が必要となります。株式を譲渡しようとする者、または譲り受けた者は、会社に対して、譲渡を承認するかどうかの可否の決定を請求することが必要となります。もし会社の承認が得られない場合は、株式の譲渡は会社に対抗することができず、譲り受けた者が自分が株主であると主張することは難しくなります。

 なお、会社が承認しない場合には、さきほどの株式を譲渡しようとする者、または譲り受けた者は、会社が株式を買い取るか、株式を買い取る者を指定するよう、あわせて会社に対して請求することができます。このような買い取りとなった場合、株式の売買価格は、当事者間の協議によって定めます。協議が整わない場合には、裁判所に対して価格を決定するように申し立てることができ、裁判所が決定した価格によって株式の譲渡が成立することとなるのです。

3.非公開会社の敵対的買収 事例その1

 そもそも非公開会社においては、上記のように株式を譲渡するのに会社の承認が必要となります。このため、会社が意図しない形での株式の売却が行われることはなく、敵対的買収などは起こりにくいようにも思えます。

 しかしながら、例えば次のような事例が想定されます。

 【事例】

 会社の企業価値:50億円

 株主構成:経営者 48%

      経営者と仲の悪い親族 48%

      その他の親族 4%

 

 上記のような会社において、経営者と仲の悪い親族が、ライバル企業に対して株式を売却する話を進めて、会社に譲渡の承認の請求を行ってきたとしましょう。また、その請求にあわせて、承認しない場合は、会社が株式を買い取るか、株式を買い取る者を指定せよ、との請求も行ってきたとします。

 この場合、会社はライバル企業による買収を拒否しようとする場合、企業価値の約半分近くに当たる24億円近くをかけて株式を買い取るか、またはその金額を支払って会社の株式を取得する他の誰かを見つけなければなりません。

 会社としては、自社の株式を取得するためだけに24億円近くものキャッシュが流出することは大きな痛手であり、経営そのものに大きな影響を与えかねません。そうなると、それだけの金額を支払って、株式を取得してくれる別の相手を見つけられなければ、株式の譲渡を承諾せざるをえない状況に陥ることも考えられます。

 ライバル企業としては、株式の50%超を取得するような経営権の取得はできていないまでも、3分の1超を保有することで、株主総会の特別決議(重要事項を決定できる)の拒否権を持つことができます。そうなると、役員を送り込むことや、業務提携など様々な要求を行うことなどが実質的に可能となり、今後の交渉を有利に進めることもできるでしょう。

 また、その他の親族株主も、価格などの様々な条件によっては、どちらに転ぶか不確定な状態にもなります。何より、不意の買収によって経営者が大きな精神的ダメージを負うことになれば、株式を手放す可能性すら出てくるかもしれません。

4.非公開会社の敵対的買収 事例その2

 もうひとつの事例は、非公開会社の敵対的買収として話題となったニュースから取り上げたいと思います。総合文具メーカートップのコクヨが、筆記具業界4位のぺんてるに仕掛けた敵対的買収のケースです。

 この事例において、まず注目すべき点は、コクヨがぺんてる株式を取得した初めの手法といえるでしょう。ぺんてるは、株式の譲渡に、ぺんてるの取締役会の承認が必要となる非公開会社でした。

 これに対して、コクヨはぺんてる株式そのものを取得するのではなく、ぺんてる の筆頭株主であった投資会社マーキュリアインベストメントが運営するファンド(ぺんてる株式約38%を保有)に出資することで、当該ファンドを取得したのです。これによって、コクヨは間接的に株式を保有することで、ぺんてるの取締役会の承認を得ることなく、ぺんてる株式をコントロールできる状態に置きました。ちなみに、このファンドが保有していたぺんてる株式は、クーデターにより追い出された、創業家出身の元社長が保有していた株式を買い取ったものでした。

 ぺんてるは、コクヨによる株式の取得に反発する意思を見せたものの、その後、業務提携に向けた協議などを経て、結局はその後にファンドからコクヨへの株式の譲渡を承認することになりました。

 事態はさらに進みます。ぺんてるが、コクヨの知らぬところで、総合文具メーカー2位のプラスと資本提携の協議を進めていたことが、内部告発書により発覚したのです。これを受けて、コクヨはぺんてるの株式の50%超を取得し、子会社化する方針を発表します。ぺんてるではOBが相当数の株式を保有していたため、OBが保有している株式を標的として、コクヨとプラスによる株式争奪戦が繰り広げられることとなりました。

 ここで、もうひとつ注目すべき点があります。繰り返しになりますが、コクヨは、ぺんてるの取締役会の承認が得られなければ、株式を取得できません。そのため、株式を買い取る際に、株主総会の委任状もセットで取り付けたのです。これによって、ぺんてるが取締役会で譲渡を承認しなければ、すぐさま臨時株主総会を招集し、取締役会の構成メンバーである現経営陣を退陣させたうえで、新しい経営陣に譲渡を認めさせるという手法をとったのでした。

 この敵対的買収は、コクヨがぺんてるのOBの賛同を得られず、ぺんてる株式の約46%しか取得できなかったため、結局は失敗に終わります。しかしながらこの事例は、株式に譲渡制限が付された非上場会社においても、こうした買収の脅威にさらされる、という事実を世間に知らしめることになったのです。

 なお、余談とはなりますが、株主から保有株式を売りたいとの申し込みがあった際、以前のぺんてるは1株あたり125円の価格を提案していました。ところが、コクヨの提案した買取価格は、その30倍に近い1株3,500円でした。(その後、買取価格は4,200円まで引き上げられました。)そして、一連の流れにおけるぺんてるの株主総会において、ある個人株主によって、1株2,000円でぺんてるに自社株買いを求める株主提案まで行われたのです。

 非公開会社である多くの企業では、株式を株主から取得する際に、比較的安価で取得できたような事例も多いかと思います。しかし、一部の株主から株主総会などにおいて異議が出た場合や、第三者が介入した場合には、株式の経済的価値を軽視しているとして、こうした価格が崩れてしまう可能性もあります

5.おわりに

 近年では、弁護士などを通じて、株主が高額での株式買取の請求を会社に対して行ってくる事例も増えています。会社にとっては、税金に関連する形での株式の評価だけではなく、企業価値としての株価を意識する機会が増えているともいえるでしょう。

 何度も申し上げている通り、非公開会社においては、株式の譲渡制限が付されていることで、敵対的買収は起こりえない、と思われている方も多いかと思います。ですが、必ずしもそうとは限りません。株主の構成や、企業価値、保有する技術などの様々な事情によっては、非公開会社においても、敵対的買収の脅威にさらされることがあるのです。事例1のように株式を保有している仲の悪い親族との対立や、事例2のようなライバル企業による買収合戦など、きっかけは様々です。

 会社にとって不測の事態が生じないためにも、あらかじめ株主について様々な事態を想定した対応を行っておくことが求められます。

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西本 拓司

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