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信託受益権売買と委託者変更登記の要否

不動産

2013.09.09

信託対象不動産の受益権を売買し、信託契約を解除することによって所有権を受益者に移転するという不動産所有権移転スキームが用いられることがあります。

不動産の信託契約の条項の中には「受益権の譲受または承継により受益権を取得した者は、本件信託契約上の受益者及び委託者としての権利及び義務をすべて承継し、かつ、本件信託契約上の委託者の地位及び受益者の地位を承継するものとする。」という条項が入っていることが多く見受けられます。

この条項が入っている場合、受益権を売買することによって受益権を取得した者は、受益者の地位とともに委託者の地位も承継することになります。

ここで、委託者の地位の承継に伴い、受益権売買による受益者変更登記とその後の所有権移転登記の前提として、委託者変更登記も必要になるのかどうかが問題となります。

信託法は平成19年9月30日に改正されており、改正前の旧信託法には、委託者の地位移転に関する規定がなく、委託者の地位の変更が可能かどうか信託法上明らかではなかったため、信託条項中に「受益権の譲受または承継により受益権を取得した者は、本件信託契約上の受益者及び委託者としての権利及び義務をすべて承継し、かつ、本件信託契約上の委託者の地位及び受益者の地位を承継するものとする。」という条項が入っていたとしても、委託者の変更登記は実務上行われておりませんでした。

しかし、新信託法においては、信託法第146条1項に「委託者の地位は受託者及び受益者の同意を得てまたは信託行為において定めた方法に従い、第三者に移転することができる。」と規定され、委託者の地位移転に関して条文上明確にされました。

これにより、受益権売買があったときは、受益者に委託者の地位も移転することが条文上明らかになったことになります。

新信託法146条により、受益権売買が行われ、信託条項中に委託者の地位承継条項があるときは、受益者に委託者の地位も移転することが条文上明らかになったことと、「登記事項について変更があったときは、受託者は遅滞なく信託の変更登記を申請しなければならない」とする不動産登記法103条の規定から、新信託法下においては、受益権売買が行われ、信託条項中に委託者の地位の承継条項がある場合は、信託目録の委託者変更登記を申請しなければならないことになります。(登記研究752)

旧信託法時に行われた信託については、従前と同じく、委託者の変更の登記をしなくても受益者変更とその後の所有権移転登記ができるとするのか、新法と同様の扱いで委託者変更登記をしなければいけないのかについては明確な先例通達は、私が知る限りは出ておらず、法務局によっても取り扱いが異なっているように感じます。

経験上、従前と同じ扱いで委託者変更登記は要しないとされることも多いのですが、全ての法務局で同じ扱いがなされるとは限りません。

旧信託法時に行われた信託について受益権売買を行うときは、委託者変更登記を要するか否かについて予め法務局と協議しておく必要がありますので、ご留意ください。

(北村 清孝)

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