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判決による登記の留意点とは 登記上の問題点を考慮した訴状の起案

その他

|更新日:2022.11.1

投稿日:2011.04.12

(以下のコラムは、主に弁護士事務所の方を対象として執筆されたものです。)

時効取得による所有権移転登記等登記手続をするために、登記手続請求訴訟を提起される場合があると思います。

登記手続請求訴訟の訴状を起案される場合においては、判決後の登記手続における問題点まで考慮して起案されることを強くお勧めいたします。

判決が取得できたとしても、当該判決を用いて必ず登記手続ができるとは限りません。

法務局には「書面審査主義」、「形式的審査主義」という大原則があるため、たとえ登記手続を命じる判決が裁判所から出ていたとしても、登記簿上の記載と申請書の記載及び添付書類の内容に齟齬がある場合や添付書類が不足する場合は、法務局は受理できなくなってしまうことがあり得るのです。

一例を挙げさせていただきますと、たとえば、時効取得による所有権移転登記手続請求訴訟の場合を考えます。

前提

対象物 土地

土地登記名義人 亡A (昭和40年1月1日死亡)

A相続人=B

時効取得者 C (時効起算日 昭和50年1月1日)

原告C

被告B

請求の趣旨

「被告は、原告に対し、別紙目録記載の土地につき、昭和50年1月1日時効取得を原因とする所有権移転登記手続をせよ。」


上記代位による相続登記を行うためには、原則として、亡Aに関する戸籍(13歳頃から死亡までのもの全て)、亡Aの最後の住所を証する書面、Bの住民票が添付書類になります。

上記添付書類のうち、亡Aに関する戸籍の一部につき保管期間の関係から取得ができないものがある場合や、亡Aの最後の住所を証する書面としての住民票の除票あるいは戸籍の附票が保管期間満了によって取得できない場合が多々あります。

戸籍の一部が添付できない場合は、「Aの相続人は他にいない」旨の内容のA相続人全員すなわち被告の印鑑証明書付上申書(実印押印)の添付が必要になります。

最後の住所を証する書面が添付できない場合は、「登記簿上のAと申請に係るAは同一人に相違ない」旨のA相続人全員すなわち被告の印鑑証明書付上申書(実印押印)の添付が必要となります。

通常、訴訟の相手方が原告の手続のために実印を押印したり、印鑑証明書を渡してくれたりということは考えられません。

こうなれば、いくら判決が出ていても、時効取得の前提で必要となる相続登記ができないことになってしまうという問題が生じます。

そこで、戸籍の一部が取得できない場合や最後の住所を証する書面が添付できない場合、判決理由の中で、「Aの相続人は他にいない」旨及び「登記簿上のAと申請に係るAは同一人に相違ない」旨が記載されてあれば、当該記載のある判決の添付をもって被告の上申書・印鑑証明書に代えることができるという取扱が存在します。

訴状の中に「Aの相続人は他にいない」旨及び「登記簿上のAと申請に係るAは同一人に相違ない」旨を記載があることによって先刻の問題を回避することができるのです。

また、判決理由中に「Aの相続人は他にいない」旨の記載があれば、相続登記において判決が相続証明書を兼ねる、すなわち、戸籍類の添付が不要になります。

上記のように、判決後の登記手続における細かい問題点を考慮して訴状を起案しなければ、その後の登記ができなくなったり、添付書類が煩雑になるケースが多々存在します。

そして登記上の問題点については、登記につき深い造詣のある司法書士でなければ見落としてしまうような、細かでかつ複雑に絡み合ったものも多々あります。

登記手続請求訴訟に関する訴状を起案される場合は、是非とも我々司法書士の力をご利用いただき、我々司法書士が先生方の一助となればと願ってやみません。

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北村 清孝

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