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本人に知られずに利用できるの?成年後見制度

成年後見

2013.07.29

「被後見人に選挙権を与えていない公職選挙法は違憲」。こんな判決が新聞の一面を飾ったことからもわかるように、世間でも「成年後見制度」という制度への認知と関心が高まってきたように感じます。弊社開催のセミナーでも「成年後見制度」に関するセミナーへの受講者数の増加が目を引きます。

先日、セミナーの場でケアマネージャーの方から以下のような質問をいただきました。

「”成年後見一問一答”と、市役所が発行している資料に齟齬があるようなのですが・・・」

”成年後見一問一答”とは、弊社がオリジナルで作成した成年後見制度のQ&A集をまとめたパンフレットなのですが、そのなかには「本人の同意が必要である」と書いている項目が、市役所の資料では「本人の同意は必要ない」と書かれていたのです。いったい、どうなっているのでしょうか?

本人に気付かれずに、成年後見制度の利用ができるのかどうか。この問題は、在宅で生活している高齢者に関わっている方にとって、非常に大きな問題であると思います。金銭の管理や、生活状況をもはや自分ではコントロールできなくなっているにも関わらず、そのことに自分では気付いていない方が多く存在しています。

たとえば、冷蔵庫の中に食品があるのにも関わらず、新たに食品を購入してしまう。入浴をしなくなる。衣類を着替えなくなる。等々、通常の判断能力があれば取りえないような行動をとっているのです。しかし、本人は自分が適切な判断を行えているという自負があるため、周囲からの関わりを拒絶し、介護認定も受けず、一人で生活していることが往々にしてあります。そのまま放置していては非常に危険な状態であることは、誰の目にも明らかです。

そんな状況にある方でも、本人に知られることなく成年後見制度の利用ができれば、後見人が本人のために介護認定申請を行い、居宅介護支援事業所と契約することができるようになります。さらに、訪問介護事業所と契約することで、その方はしっかりとしたサービスを受け、健康な生活をおくることができるようになります。

結論から言えば、本人に知られずに成年後見制度を利用するためには、本人の状態ごとに3種類に分かれているタイプのうち、「後見」の類型であることが必要です。それよりも軽い状態である「保佐」や「補助」の類型である場合、必ず家庭裁判所において本人の意思の確認が行われるため、家庭裁判所の調査官が本人に会うこととなり、本人が拒絶している場合は利用が難しくなるといえるでしょう。

ところで、冒頭で紹介した「市役所の資料」には、詳しく読むと「”保佐”と”補助”の類型であって、”同意権”のみを付与するときは、本人の同意は不要である」との記載がありました。

この問題を考えるにあたり、さきほどから何度か登場している後見制度の3つの類型、「後見」「保佐」「補助」について、それぞれ本人ができることは何か、後見人が担うことは何かを簡単に整理してみたいと思います。

まず「後見」です。「後見」は日常生活に関する行為(たとえば、日用品を買ったり、水道光熱費の支払いをしたりすること)だけは自分で行うことができ、それ以外のことについては、後見人が代わって行うことになります。要するに「代理権」が与えられるということです。

次に「保佐」は、法律(民法13条)で決められた9つの行為(たとえば、お金を借りたり保証人になったりすること、不動産を売ったり担保に入れたりすること、自分の財産を贈与すること、相続の話し合いに応じること等)について、自分一人では有効にできません。「保佐人」という人に相談して、その同意が得られれれば初めて効力が発生する(同意権)という決まりです。相談しないで本人が一人でやった場合は、保佐人から取り消しができます。これを逆に考えると、法律に定められている9つの行為以外は、自分で判断ができるということになります。

最後に「補助」ですが、「補助」は「保佐」をさらに縮小したもので、9つの行為について、より限定して「補助人」という人に相談する必要があるものです。同意が必要とされる行為は、法律に決めている9つの行為だけではなく、たとえば通信販売や訪問販売による契約の締結、クレジット契約の締結というような在宅の高齢者の方にとってリスクの高い契約行為についても同意が必要と決めることができます。また、「後見」のようにその本人に代わってする「代理権」も限定的に付けることができます。実務的には本人に代わって行う「代理権」を付けることが大半ではないかと思います。

このように、3つの類型を比較してみると「後見」と「保佐」「補助」には大きく違いがあるように感じます。「後見」は原則本人が行為できない、「保佐」「補助」は原則本人ができる、で規定されています。

そして、「保佐」と「補助」を利用する場合は、「同意権」や「代理権」の内容にかかわらず、本人の同意、具体的には本人の面談が必要になります。

法律にも民法876条の4には、「代理権」をつけるには本人の同意が必要である旨が明記されており、また家事事件手続法130条、139条にも「保佐」・「補助」の利用にあたって本人の意見を聞かなければならない旨が記されています。この民法の規定から、「代理権」を付けないで「同意権」を付けるだけなら本人の面談は不要である、と市役所の資料は考えてしまったのだかもしれません。

高齢者の暮らす現場では、本人が後見制度を利用することや、周りとの関わりを拒絶しているケースが意外に多くあります。成年後見制度の中でも、類型によっては、本人に面談することなく申立てができる場合があります。とはいいながら、審判がおりた後の通知が本人に送られたり、申立人を誰にするかなどの他の問題は別途生じますが、その人に代わっていろいろな行為ができる後見人がいれば、その本人のために様々なケアを行うことができます。

なお、本コラムで触れた「成年後見一問一答」は、当事務所のノウハウを詰め込んだ渾身の一冊になっており、この度第5版の改訂となります。是非とも皆様にもお手に取っていただき、制度の利用にお役立ていただきたいと思います。

(白藤 善啓)

 

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