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相続が発生した個人株主の株式を会社が強制買取する方法

相続

|更新日:2022.12.1

投稿日:2012.03.05

相続人に対する株式売渡請求の制度をご存知でしょうか。

平成18年5月1日の会社法の施行によって、新たに創られた制度です。この制度を利用する目的は、株主の相続人からの株式の強制買取です。

個人株主の相続は防ぐことのできないものであり、会社としては、相続による株式の承継を想定しておかなければなりません。

しかし、譲渡により株式を取得した場合に取締役会などの承認を得なければならない、いわゆる「株式の譲渡制限」は、相続による承継を対象としません。

つまり、株主として扱うかどうかの会社側の判断の余地なく、相続人を新たな株主として取り扱わなければなりません。このような事態を防ぐための一つの策として、相続による株式の承継について、会社の判断で強制買取ができるよう途を確保しておくことが有効です。

相続人からの強制的な買取を実施するためには、まず、相続人に対する株式売渡請求の規定を定款に定めておく必要があります。

この規定を定めることができるのは、株式の譲渡制限を定款に定めておく必要があります。譲渡制限を定めていない場合は、売渡請求の規定のほか、株式の譲渡制限も定めなければなりません。

ひとまず定款を変更して対策することとなります。

実際に株主に相続が起こり、会社側でその株主の相続人は株主として望ましくないと判断したとします。そこで、定款規定に基づく株式の売渡請求を行います。

売渡請求は、会社が株主の相続を知ったときから1年以内に行う必要があります。相続があった場合には、会社法では株主から相続の事実を届け出なければなりませんが、株主と会社の代表者との関係から届出までに相続の事実を知っている場合があります。

このような場合には、会社が相続の事実を客観的に認識した日が当該日から1年以内となることに注意が必要です。

そして、相続の事実を認識した日から1年以内に、株主総会の決議によって、買取請求をすることを決定します。相続人から株式を取得し対価を支払うのは、会社です。

会社にとっては、自己株式の取得に当たりますので、株主総会の承認を得なければなりません。なお、この決議においては、請求の相手方となる相続人は議決権を有しません。

売主となる相続人を除いた他の株主で株主総会の決議を行います。

次に、株主総会の決定に基づき相続人に対して売渡請求の通知を送付します。買取は強制的ですが、価額の決定は合意です。売買価額を相続人と協議し、協議が整わない場合に裁判所の決定に委ねる方法を選択できます。

価額について協議が整わないことを理由に、裁判所へ価額決定の申立てを行います。この申立ては、相続人に対する売渡請求の通知送付の日から20日以内に行う必要があります。

価額の協議不調のまま、20日の期限を過ぎても裁判所への申立をしないと、売渡請求自体が効力を失いますので、この期限を想定して裁判所への申立を事前に準備しておくことが必要でしょう。

売渡請求は相続後1年以内に行えばいいのですが、裁判所への申立ては請求から20日以内に行う必要があることには注意が必要です。

裁判所による価額の決定は、請求の時点の会社の資産状態その他一切の事情を考慮して判断されます。

申立てには貸借対照表だけでなく、『株式の鑑定(査定)書』が必要です。会社の資産内容によっては査定に時間を要する場合がありますので、事前に株式鑑定などの協議不調を想定した準備が必要でしょう。

協議か、裁判所の決定か、いずれかで売買価額が決定された後は、株券を発行していなければ代金を支払うことで相続人からの買取は終わり、当該株式は会社の株式となります。

また、株券を発行していれば株券の交付を受け、代金を支払うことで手続きは完了します。

この売渡請求は、定款に定めておくことで対策しますが、会社のすべての株主の相続について適用されます。これは、大株主であっても例外ではありません。これによって、以下のようなリスクが考えられます。

例えば、オーナー株主が90%、その他株主が10%の会社において、オーナー株主が死亡した場合、オーナー株主の相続株式の売渡請求を決定する株主総会では、その相続人は、決議に参加できません。

よって、残りの10%の株主だけで、その決定を行うため、通常は影響力を持たない株主の意見で決定されてしまうこととなります。

もちろん自己株式としての財源規制がありますので、90%は現実的ではないかもしれませんが、利益が潤沢に留保されていれば可能性はあります。

上記リスクについては、予め定款に売渡請求に関する規定を設けないで、対象となる株主の相続が発生した後に定款に規定を設ける方法で回避できます。

この場合は、相続認識後1年以内という売渡請求の期限に注意が必要です。

また、オーナーの死亡について万一少数株主から請求があった場合には、株主総会の開催には取締役会又は取締役の決定が必要であるため、少数株主が取締役でなければ開催に時間を要します。その間に、定款を変更して規定を削除するという方法も理屈では可能です。

いずれにしろ、リスクはあるものの、裁判所における価額決定も含め、必ず買取ができる手段であるため、個人株主の相続の対策としては有効でしょう。

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吉田 有希

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