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自己所有物の時効取得

不動産

|更新日:2022.12.1

投稿日:2013.02.04

様々な理由により、登記名義が真の所有者でなく、第三者名義になっており、真実の所有者が自分の登記名義を回復する必要があるという事案にまま出くわすことがあります。

通常、真実の所有権者でない登記名義人の登記への協力が得られない場合は、判決等裁判所の債務名義を得て、「真正な登記名義の回復」等を登記原因として最終的に所有権を真実の登記名義人に戻す手続きをすることになります。

ただ、真正な登記名義の回復をもって登記名義を回復するため裁判所の債務名義を得るためには、真実の所有者であると主張する者が真実の所有者であることを立証する必要があります。

この立証のためには、過去の売買契約書等真実の所有者であることを立証する何らかの材料が必要になりますが、事案によっては、相当過去の事実関係であって立証が十分にできないケースもあろうと考えられます。

そのような場合に使える手法として、事案によっては、自己所有物の時効取得という手法が有効に使える場合があります。

通常、時効取得は、第三者の所有物につき自己の物と信じて一定期間占有を継続した者にその所有権を取得させ、永続して占有するという事実関係を権利関係に高めようとする制度であります。

そして、民法162条によりますと、時効取得の要件は、「所有の意思をもって他人の物を占有した者は、」となっており、自己が所有するものについては時効取得の対象外となっているようにも読めます。

しかし、最高裁の判例によりますと、「所有権に基づいて不動産を永く占有する者であっても、登記を経由していない等のために所有権取得の立証が困難であったり、所有権の取得を第三者に対抗することができない等の場合において、取得時効による権利取得を主張できると解することが制度本来の趣旨に合致するとして、自己の物について時効取得を許さない趣旨ではない」と判示しております。(昭和42年7月21日最二小 判決)

従いまして、当該最高裁判決を根拠とすれば、自己所有物であっても、時効取得を登記原因として所有権移転登記が可能ということになります。

過去の経験上、実際に法務局に対し、自己所有物の時効取得で所有権移転登記申請を行うためには、事前の法務局とのすり合わせが必要になったり、判決書に記載いただく必要のある事項が生じる場合がございますので、このような事例を担当されておられるような場合は、判決が出される前に関係各所と綿密な事前相談を行うか、当該業務に詳しい司法書士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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北村 清孝

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