ABL(債権・動産譲渡担保)について (1)
企業法務
|更新日:2022.12.8
投稿日:2012.09.11
本稿は金融機関等の融資担当者様、もしくは企業経営者様、あるいは弁護士・司法書士等の専門家に対するものです。また、その性質上難解な法律用語も含まれますが、なにとぞご了承ください。企業の資金調達方法、企業間取引の担保手法、新たな融資機会の開拓の一つの手法としての制度概要をご紹介させていただくものです。
(1)ABLとは
ABL(Asset Based Lending)とは、企業が保有する「在庫」や「売掛債権」を金融機関に担保提供することによって資金調達をする方法のことです。従来わが国の融資制度は、不動産担保、連帯保証人への依存度が高く、担保といえば、不動産あるいは連帯保証人を指しました。ところが、企業のバランスシートを見ると、売掛債権や動産の占める割合が不動産を凌駕していることが少なくありません。近年、動産・債権譲渡特例法の制定等により、不動産、連帯保証人以外の担保手法、動産・債権を含めた企業資産を資金調達に活用する方策としてのABLが注目をあびてきております。
(2)ABLのメリット
ABLについては以下のメリットが考えられます。
1.企業側のメリット
- 資産の有効活用
- 資金調達の多様化
2.金融機関側のメリット
- 新たな顧客層の開拓・・・不動産、資産を有する保証人を持っていないが、事業内容が優良な企業(ベンチャー企業)に対しても融資が可能となり、これまで融資できなかった企業への道が開拓できます。
- 企業評価能力の向上・・・在庫や売掛債権を担保とするには、流動する資産を的確に評価する必要があるので、この担保手法を利用していく中で、企業の評価能力が養われます。
- コンサルティング能力の向上・・・動産や売掛債権を含めた企業資産を資金調達に活用する方策を提示することにより、融資対象企業に対して最も適した資金調達方法を提示することができるようになります。
(3)担保設定
1.動産(在庫品等)担保の具体例
未登録自動車、機械、貴金属、魚、米、牛、豚、ブランド品etc.
対象動産の評価が可能で、ある程度以上の価値があり、換価処分が可能であって、担保管理が容易であるものであれば多種多様なものが対象となります。
2.債権担保の具体例
債務者が有する取引先に対する債権
売買代金債権、運送料債権、診療報酬債権、賃料債権etc.
3.担保手法
担保手法は譲渡担保という形を取るのが一般的です。譲渡担保とは、担保のための譲渡という意味で、対象物を一旦債権者に譲渡移転し、弁済があった時点で本来の所有者に戻すというものです。
4.対抗要件
担保には対抗要件という問題がつきまといます。対抗要件とは、譲渡や担保の効果を第三者に対して有効に主張するにはどのような手続を踏む必要があるかというものです。
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