相続放棄の期限は3か月!期間を伸ばせるケースや申立て方法を解説
相続
投稿日:2024.10.24
相続手続きする際にマイナスの財産が多い場合は「相続放棄」を検討する方もいるでしょう。
相続放棄の期限は、一般的に相続開始を知った時から3か月以内と定められています。
しかし、さまざまな事情で期間内に手続きを完了できない場合、どうすれば良いのかわからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、相続放棄の期限に関する基本知識や期限を過ぎてしまった場合の対処法、期限を延ばすことができるケースなどについて解説します。相続放棄に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
相続放棄の期限は3か月
相続放棄の手続きを行う期限は「3か月」と定められています。
この3か月は熟慮期間と呼ばれ、相続方法を検討するための期間とされています。
相続人が選択できる相続方法は、以下の3つです。
単純相続 | ・プラスの財産もマイナスの財産も全て相続する ・プラスの財産のほうが多い時に選択される |
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限定相続 | ・マイナスの財産の弁済を、プラスの財産の範囲内で行うことを条件に相続する ・プラスの財産以上の債務を負うリスクをなくすことができる |
相続放棄 | ・相続に関する一切の権利を放棄する ・債務や相続トラブルを避けられる代わり、プラスの財産があったとしても受け継ぐことができない |
特別な手続きを行わなければ、通常では単純承認とみなされます。
相続方法によっては多額の債務を負う可能性もあります。
そういった意味からも熟慮期間は非常に大切なものといえるでしょう。
カウントを始めるタイミング
相続放棄のカウントが始まるのは、自分に相続が発生していることを知ってから3か月と定められています。
ここで気を付けなければならないのは、被相続人(亡くなった人)の死亡日から3か月ではないということです。
付き合いのある親族であれば亡くなったことがすぐに伝わりますが、長年疎遠になっている場合、自分に相続権があること自体知らなかったというケースも少なくありません。
また、被相続人の子や配偶者が相続放棄しており、自分に相続権が回ってきたというケースもあります。
いずれの場合も相続放棄の起算日は、死亡日ではなく「自分に相続権があると知った日」となります。
そのため、熟慮期間が開始されるタイミングは相続人によって異なるという点に注意が必要です。
3か月以内に完了しなければいけないこと
相続放棄の期限は3か月と定められていますが、手続きを期限内に全て完了させなければならないということではありません。
相続放棄を行うには、家庭裁判所に申述書を提出して認められる必要があります。
期限内に必要な手続きを開始して書類を提出すれば、その後の手続きが3か月を超えても問題はありません。
相続放棄の期限が過ぎたときの原則
相続が発生したことを知ってから3か月間、何も手続きをしなかった場合はどうなるのでしょうか。
相続方法を選択できる熟慮期間を過ぎてしまうと、プラスの財産もマイナスの財産も全て受け継ぐ「単純承認」に移行するのが原則です。
「相続放棄をすることを知らなかった」「期限までに書類がそろわなかった」などの理由があったとしても、期限が過ぎてしまうと認められません。
相続放棄や限定承認を検討している場合は、必ず期限内に手続きを開始するか、相続放棄の期間伸長の申し立てを行いましょう。
相続放棄の期間は伸長できる
相続放棄の期限は3か月と定められていますが、やむを得ない事情で熟慮期間内の手続きが難しい場合は家庭裁判所に「相続放棄の期間伸長の申し立て」を行うことで、期限の延長が可能になります。
ただし、どのような理由でも伸長が認められるわけではなく、妥当な理由であると裁判所に認定されなければなりません。
原則として熟慮期間が過ぎてからの申し立ては無効になるので、日程には余裕を持って手続きを行うことが大切です。
また、相続放棄の伸長は各相続人がそれぞれ申し立てを行う必要があります。
相続人の一人が伸長を申し立てても、ほかの相続人の期限には影響しないので注意しましょう。
相続放棄の申述期間の伸長が認められやすいケース
相続放棄の期限を延長するには「相続放棄の期間伸長の申立て」を行う必要がありますが、延長が妥当かどうかは家庭裁判所が判断することになります。
たとえば「仕事が忙しく財産調査の時間がなかった」「調査方法が分からなくて放置してしまった」などの理由では伸長が認められにくい傾向にあります。
それでは、どのようなケースであれば認められるのでしょうか。
ここでは3つのケースを例に解説します。
借金の状況が不明確な場合
相続放棄をするかどうか決めるのに、マイナス財産がどのくらいあるのかは大きな問題です。
借金の状況を正確に把握するには通帳のチェックだけでなく、信用情報の調査も必要です。
場合によっては、故人宅を調べて契約書や督促状を捜索しなければならないこともあるでしょう。
被相続人がどのくらいのマイナス財産を抱えていたか不明確な場合は、申述期間の伸長を申し立てることをおすすめします。
相続財産を調べるのに時間がかかる場合
遺品整理や相続財産の調査を開始するのは四十九日が過ぎた頃が一般的ですが、そこから調査に取り掛かると3か月を過ぎてしまう可能性が高いです。
特に「不動産を複数所有している」「投資をしていたとは聞いていたが、契約書や取引明細などが見つからない」などの場合は、時間がかかります。
また、相続する財産についての情報が全くないという場合も一から調査を進めることになるので、相続放棄の期間延長を申し立てるほうが良いでしょう。
ほかの相続人が財産を隠していることが発覚した場合
ほかの相続人によって相続財産が隠されており、財産の正確な状況を知ることができないと相続放棄の判断を下すことができません。
相続財産を正確に把握するには、財産を隠している相続人と交渉や話し合いが必要ですが、それで解決しなかった場合は開示を求めて法的措置を取ることになります。
いずれの場合も3か月で結論を出すのは難しいので、相続放棄の期間延長を検討するほうが良いでしょう。
相続放棄の伸長を申立てる方法
3か月の熟慮期間内に相続放棄を行うことが難しい場合は、家庭裁判所に申述期間の延長を申し立てる必要があります。
必要な書類や手続きの流れは、以下の通りです。
必要な書類
相続放棄の期間延長には、以下の書類をそろえる必要があります。
- 申立書
- 被相続人(亡くなった人)の住民票除票または戸籍附票
- 利害関係を証明する資料(戸籍謄本等)
- 相続放棄の期間伸長を求める相続人の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本(除籍謄本や改正原戸籍等)
申立書の書式は、裁判所のサイトからダウンロードできます。
申し立てるのが代襲相続人(孫・甥姪)の場合、被代襲者(本来相続するべきだった人)が亡くなったことがわかる資料(除籍謄本や改正原戸籍)も必要になります。
同じように、被相続人の親や兄弟姉妹が申し立てる場合も、直系卑属と直系尊属が死亡していることが分かる資料が必要です。
手続きの流れ
必要な書類をそろえたら、申立書を作成して家庭裁判所へ提出します。
申立書の記載例は裁判所のサイトに公開されているので、参考にしながら作成を進めましょう。
書類の不備がなければ、延長の意思確認のための照会状が送られてきます。
こちらに必要事項を記載して返送しましょう。
家庭裁判所は提出した申立書や照会状の内容に基づき、相続人や相続財産の状況を総合的に判断して相続放棄の期間延長の可否を判断します。
相続放棄の期間の伸長手続きをする際の注意点
相続放棄の期間延長を申し立てするにあたり、以下のようなNG行為をしてしまうと相続放棄が認められなくなることがあります。
手続きを行う際の注意点を2つ紹介します。
相続財産の名義変更や処分などを行わないようにする
相続放棄とはプラスとマイナスにかかわらず、全ての財産の権利を放棄することです。
しかし、相続放棄をする前に名義変更や処分を行ってしまうと、財産を相続する意思があるとみなされてしまいます。
単純承認に該当するとされている行為には、以下のようなものが挙げられます。
- 遺品整理を行い、不要な遺品を売却した
- 被相続人の銀行口座を解約した
- 被相続人の遺品を捜索し、財産を故意に隠した
故人宅の退去期限が迫っているなど、遺品整理をせざるを得ない状況も考えられますが、自己判断で勝手に行うのは禁物です。
相続放棄の期間の伸長手続きが完了するまでは不用意に財産を動かさないようにしましょう。
伸長手続きは3か月以内に行う
相続放棄の期間の伸長手続きは、相続が発生していることを知ってから3か月以内に行わなければなりません。
被相続人と疎遠になっており相続権が発生したこと自体を知らなかったとしても、その事実を把握した時点から熟慮期間のカウントが始まります。
この期間を過ぎると単純承認したとみなされ、相続放棄や限定承認はできなくなります。
相続放棄に必要な手続きや調査が間に合わない可能性がある場合は、3か月の間に必ず相続放棄の期間延長の申し立てを行いましょう。
相続放棄の期間に関するよくある質問
相続放棄の期限や伸長手続きの注意点について解説してきましたが、慣れない専門用語ばかりでどこから手をつければ良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、相続放棄の期間についてよくある質問や疑問点を解説します。
相続放棄の申告期限が残り10日です。郵送の場合は、3か月以内の消印で出せば良いのか、それとも裁判所に届くのが3か月以内である必要があるのか、どちらですか?
相続放棄の申告は、期限までに家庭裁判所に到着していることが大原則です。
消印が3か月以内のものであっても、到着が期限を過ぎていると無効になってしまう可能性が高いでしょう。
期限まで余裕がないのであれば、管轄の家庭裁判所に直接提出しに行くほうが確実です。
ただし、家庭裁判所は受付時間が決まっており、午前9時ごろ~お昼までと午後1時ごろ〜午後4時ごろまでの受付が一般的です。
状況によっては受付終了が早まることもあるので、必ず事前に受付時間を確認して書類不備がないように持参するようにしましょう。
半年前に親を亡くし、最近になって借金が発覚しました。今から相続放棄の手続きをしたいのですが、間に合いますか?
時間が経ってから発覚した借金を理由にした相続放棄は、合理的な説明が行えれば認められる可能性があります。
期限が経過したあとの相続放棄を認めてもらうには、きちんと財産調査を行い借金の存在が判明しなかった旨を主張することが大切です。
- 当時の財産調査の記録
- 借金に関する督促の記録
以上のようなものを提出し、事情を説明しましょう。
ただし、借金の存在を知ってから3か月が過ぎると、相続放棄が認められなくなる可能性が高まります。
借金が発覚した時点で速やかに専門家に相談して、アドバイスを受けることをおすすめします。
相続放棄の期間の延長が認められたとき、具体的にどれくらいの期間が追加されますか?
相続放棄の期間の伸長に明確な規定はありませんが、一般的には3か月程度の延長が認められるケースが多いようです。
本来の熟慮期間3か月+延長3か月で、計6か月の間に相続放棄に必要な手続きを済ませれば良いということになります。
6か月の間に手続きが完了しないという場合、もう一度熟慮期間の伸長を申し立てることも可能ですが、正当な理由を示さなくてはなりません。
必ずしも伸長が認められるというわけではないので、早めに専門家のアドバイスを受けて手続きを進めるほうが良いでしょう。
相続を知った日を示す証拠として、どのようなものが有効ですか?
相続放棄を行ううえで「自分に相続権があることを知った日付」は重要な意味を持ちます。
相続を知った日を示す材料として以下のようなものが有効なので、きちんと保管しておきましょう。
- 被相続人が亡くなったことを知らせる手紙やメール
- 裁判所などから送られてきた公的書類
- 銀行や消費者金融などから送られてきた通知書や督促状
記録が書面に残っていない場合や、どのようなものが証明になるかわからないという場合は専門家に相談してアドバイスを受けることをおすすめします。
期間内に確実に相続放棄をするなら専門家に依頼しよう
相続放棄の手続きは「分からないから」「面倒だから」と放置していると、思わぬ負債やトラブルを抱えてしまう原因にもなります。
たとえ故人とほとんど交流がなかったとしても、相続は発生します。
3か月の熟慮期間内にスムーズに相続放棄を行うには、専門家に依頼するのが確実です。
ゆずりは司法書士事務所ではご依頼主様それぞれのご事情に合わせて、最適な方法をご提案いたします。
「相続放棄するか迷っている」「手続きのやり方がわからない」など、相続問題でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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