これからの助成金にも影響しかねない資本金の額
企業法務
|更新日:2022.10.22
投稿日:2020.06.04
1.助成金と資本金との関係
新型コロナウィルス感染症の拡大を受けて、多くの事業者に甚大な影響が生じており、先の見えない状況が続いています。各種の助成金など、資金繰りに関するサポートを目的とした制度も様々なものが打ちだされており、既にご利用されている事業者の方も多数いらっしゃるかと存じます。
こうした助成金に関する注意点のひとつとして、「資本金」の問題があるのをご存じでしょうか。助成金の中には、資本金の額によって受給の可否や支給額が変わるものがあるのです。
例えば、雇用調整助成金の助成率(新型コロナウィルス感染症の影響に伴う特例)については、資本金の額または従業員の数によって中小企業か大企業かを区分し、助成率に差を設けています。
(注)資本金の額のみで区分されるわけではありません。
(例)
区分 | 大企業 | 中小企業※ |
新型コロナウィルス感染症の影響を受ける事業主 | 2/3 | 4/5 |
解雇をしていないなどの上乗せの要件を満たす事業主 | 3/4 | 9/10 |
※中小企業の要件
小売業(飲食店を含む) | 資本金5,000万円以下または従業員50人以下 |
サービス業 | 資本金5,000万円以下または従業員100人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下または従業員100人以下 |
その他の業種 | 資本金3億円以下または従業員300人以下 |
具体的な数字の例でいうと、サービス業を行い、資本金が7,000万円、従業員が100人を超えるような事業者の方は、上記の中小企業の要件にはあてはまりません。このように、資本金の額により助成の要件に影響が出てしまうことを懸念される事業者の方から、「資本金の額の減少を行いたい」といったようなご相談が弊社にも寄せられております。
2.資本金を減らすとどうなる?
そもそもの話として、資本金の額とはどういった考え方に基づくものなのでしょうか。資本金とは、株主が会社に出資した金額です。(会社法上、株主から出資された金額の2分の1は資本金として計上しなければならず、資本金として計上されなかったものは資本準備金となります。)資本金の額は、登記事項のひとつとして公開される情報でもあり、資本金の額が大きい=規模が大きい会社、との印象を与えることはできるかもしれませんが、あくまでも印象にすぎません。
会社の安定を図る数値としてよく言われるものに、「自己資本比率」という指標があります。この「自己資本比率」は、「総資産」に対する「純資産」の割合のことを指します。仮に、資本金の額を減少させたとしても、その減少させた金額は、「純資産」のうちの「その他資本剰余金」または「資本準備金」となるため、「自己資本比率」としては特に変動しません。したがって、株主から出資された金額のうち、資本金に割り当てている額が大きいから安定した会社であり、額が小さいから安定していない会社、というわけではありません。
3.資本金の額の減少の手続にかかる期間
資本金の額の減少の手続については、どんなに早急に行っても、2ヶ月近くを要します。下記に簡単な流れを記載していますが、資本金の額の減少を行うには官報への公告が必要となります。この官報への公告が、掲載までに約14営業日(毎年の決算公告を行っている場合は約7営業日)ほどかかり、さらに掲載後1ヶ月の期間を設けなければならないため、短期間では終わらないのです。
なお、資本金の額の減少の手続を行った場合、減少した資本金の額は、「その他資本剰余金」または「資本準備金」に計上されることとなります。
4.今後を見据えた資本金の額の検討
現在、コロナ関連で発表されている助成金のうち、多くのもので対象期間が限定されています。このため、今から資本金の額の減少の手続に取りかかったとしても、既存の発表されている助成金の対象期間に間に合うとは限りません。
一方で、追加の助成金も発表されており、今後も追加対策が行われる可能性があります。資本金の額によって受けることができるようになる税制の優遇などもあって、現在発表されている助成金の受給だけの話ではなく、さらに先を見据えて資本金の額の減少を検討される事業者の方も出てきています。繰り返しとなりますが、資本金の額の減少を行うには、2ヶ月程を要します。資本金の額の見直しをご検討される場合には、できれば早急な対応が望ましいといえるでしょう。
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