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後見制度支援信託とは

成年後見

2013.08.12

後見制度では、認知症などの本人の財産を適正に管理することが求められます。そのため、実際に財産の管理を行う後見人に不正を防止する対策も取られていることをご存知でしょうか。

その防止策のひとつが、今回お話する「後見制度支援信託(こうけんせいどしえんしんたく)」という制度です。この制度は、後見制度を使って支援を受ける側の人(本人)の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭については通常の預貯金として後見人が管理し、その他の通常使用しない金銭については、後見人が管理するのではなく信託銀行に信託をする仕組みとなっています。信託財産になれば元本についても保証されますし、金融機関が破綻した場合でも、預金が保護される預金保険制度の保護対象にもなります。

ところで、なぜこのような信託制度が導入されたかというと、親族が努める後見人による不正事案が増加しているからです。最高裁判所の報告では、親族後見人の事案で、1年間で218件程度の不正が発覚し、被害総額は約22億円にも上るとのことです。

このような不正が多発している状況に対応するため、親族後見人の不正を未然に防ぐための制度が導入されたというわけです。

後見支援制度信託の利用の流れ

それでは、次にこの制度を利用する際の手続きの流れについて簡単に確認していきたいと思います。

(1)家庭裁判所から後見人が選任される。

家庭裁判所は、後見開始の申立を受け付けた段階から「後見制度支援信託を利用を検討すべき」と判断する場合があります。そうなると、弁護士や司法書士などの専門職を後見人に選任する取り扱いをします。このときに、裁判所が親族もあわせて後見人に選任して、それぞれの役割を分担させるような場合もあります。たとえば、日常の生活費については親族の後見人が担当して、その他の多額となる財産の部分は専門職後見人が管理するようなケースがそれにあたります。

(2)専門職後見人が信託制度の利用適否について検討するための調査を行う。

家庭裁判所から選任された専門職後見人は、後見制度支援信託の利用の可否を判断する調査検討を行います。具体的には、本人の意思、健康状態、親族関係、財産の種類、紛争の有無、遺言書の存否などを調査し、個別の具体的な状況がこの制度の利用に向くのかどうかを判断するための情報を収集します。

(調査の注意点)

この専門職後見人が調査を行う上での注意点は次のようなものとなります。

1.信託する財産は金銭に限られています。そして、不動産、保険などを換金して信託することは想定されていません。また、株式などの価値変動の激しい金融商品も、換金のタイミングなどにより親族との紛争になる可能性もあることから、望ましくないといえるでしょう。

2.本人が認知症を発症する前に特定の金融機関と深いつながりがあり、特に強い愛着をこめて特定の金融機関と取引を行っていた場合などは、その金融機関が利用できなくなる展開にもなりえますので、本人の意思を尊重して制度の利用を慎重に検討する必要があるといえるでしょう。

3.本人が認知症を発症する前に、遺言書を作成していた事実が判明した場合も、制度の利用を慎重に検討する必要があるといえるでしょう。遺言書の内容には、特定の金融財産を明記しているケースが多く、信託制度の利用によって本人の財産内容が大きく変化することで、本人がせっかく作成していた遺言書の効力が部分的になくなってしまうような可能性があるからです。

(3)専門職後見人の報告

専門職後見人は、(2)での調査結果を家庭裁判所に報告します。後見制度支援信託の利用に適していると専門職後見人が判断した場合は、

i  信託する財産の額

ii 親族後見人が日常的に支出に充てるための額

などを設定して、家庭裁判所へ報告します。逆に、制度の利用に適していない事案であると報告するケースもあります。

(4)信託契約の締結

制度の利用に適しているという報告を受けた家庭裁判所は、専門職後見人に制度利用を認める指示書を発行します。その指示書によって、専門職後見人は選定した信託銀行と、本人の法律上の代理人として信託契約を結びます。

このときの信託銀行の信託報酬についての一律の規定はありませんので、それぞれの信託銀行の価格設定により異なります。たとえば、信託契約時に15万円(消費税別)の報酬と、信託契約期間中に1年毎に3万6千円(消費税別)が必要、といった費用例があります。

(5)親族後見人への財産引継ぎ

専門職後見人は、もし信託契約締結後に関与の必要がなくなれば、後見人を辞任することになります。辞任後、専門職後見人から親族後見人に対し、管理していた財産の引継ぎが行われます。

後見制度支援信託の運用のポイント

(その1) 信託した財産は、信託銀行が管理することになります。後見人は、年金の受取や施設の利用料の支払など、信託した財産以外の日常的に必要な金銭を管理することになります。

ただし、日常的な本人の収入よりも支出の方が多くなることが見込まれるような場合には、信託財産から必要な金額が定期的に送金されるようにすることもできます。

(その2) 信託契約締結後、本人に多額の支出が必要となった場合は、後見人が家庭裁判所に対して、必要な金額とその理由を記載した報告書を提出します。家庭裁判所は、報告書の内容に問題がないと判断すれば、新たに指示書を発行します。後見人はその指示書を信託銀行に提出して、信託財産から必要な金銭の払い戻しを受けることになります。

(その3) 後見人が管理している手元の財産が増加した場合は、家庭裁判所が指示書を発行して、追加で財産を信託する場合もあります。

以上が、後見制度支援信託の概要の説明となります。制度が導入されてからの期間もまだ浅く、今後の改善点なども出てくるかもしれませんが、後見制度の信頼性を維持していくためにも、後見人の不正防止策を専門家として提案していくこと考えていく必要があるといえるでしょう。

(坂西 涼)

 

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